岩屋熊野座神社は、熊本県人吉市にある、国指定の重要文化財です。
国の重文となるほど文化的価値が高く評価されています。
鳥居、社殿、そして立地の3点に、他にはない特徴がみられます。
相良家初代長頼が建てて以来、何度も修造されていて、人吉藩としても重要な神社であったことがわかります。
参道入り口の鳥居
参道の入り口に鳥居が立っています。
辺りは住宅地になっていて、その中にポツンと鳥居が立っているように見えます。
昔は住宅がなく、鳥居の位置から参道だけが開けていました。
鳥居は1701年に寄進されたものになります。
稚児柱がついた両部鳥居形式は、人吉球磨唯一のものです。
広島県の厳島神社の鳥居は、典型的な両部鳥居で、神仏習合の名残といわれています。
しかも、社名の入った鳥居では人吉球磨最古のものです。
独特の社殿
社殿は、中央殿、左殿、右殿に分かれています。
3殿を覆屋内に治めた独特の構造です。
本殿の細部は地方色が強く表れているといわれています。
ご祭神はもちろん、熊野三社権現になります。
- 中央殿に伊邪那美命(いざなみのみこと)
- 左殿に速玉命(はやたまのみこと)
- 右殿に事解男命(ことさかおみのみこと)
なるほど、3殿に分かれている意味は、ご祭神ごとに神殿を分けてあるためです。
しかも、3殿がガラス張りの覆屋で守られています。
相殿神は八幡宮で応神天皇が祀られています。
中央殿、左殿、右殿、拝殿、覆屋、参道入り口の鳥居、すべてが国指定の重要文化財です。
岩穴
岩屋熊野座神社のもうひとつの特徴は、裏山の岩穴です。
岩穴は神社ができるずっと前からあったものです。
相良長頼は、熊野座神社をどこの建てるか、候補地をさがしていました。
領民から、鎮座地にふさわしい霊地があるという話をきき、現地に鎮座したものといいます。
岩穴には大蛇が棲むといい伝えられています。
夜が更けるとほら貝を吹く音が聞こえてくるという不思議な霊場です。
沿革
寛喜年中(1229〜1232年)、鎌倉時代に、相良家初代長頼公が熊野三山を勧請しました。
延徳年中(1489〜1491年)に社殿を造り替えています。
天正年間(1576〜1591年)に収造されます。
現在の社殿は1727年(享保12年)に造営されたもので、江戸時代の様式が混在しています。
かつて、永く岩屋権現と称していました。
1868年(明治元年)に岩屋権現から、岩屋熊野座神社に改称しています。
1876年(明治9年)には北西約100mにあった八幡宮を合祀しています。
2011年(平成23年)大修理を経て、享保のときの姿に戻りました。
2015年(平成27年)日本遺産人吉球磨の構成文化財となっています。
駐車場は鳥居横の道路を入ったところにあります。