深水発電所は、かつて熊本県八代市坂本町にあった、製紙工場へ電力を供給していた水力発電所です。
対岸の国道219号線から、遺構の姿をみることができます。
深水発電所へ行きたい
いつもは球磨川越しに見る、深水発電所です。
建物のメンテナンスは、定期的にされています。
ということは、近くまで行くことができるはずです。
実際に深水発電所へ行ってみました。
まず、深水橋で球磨川をわたります。
肥薩線の高架橋をくぐります。
降雨時は冠水の恐れがあると書いてありました。
さらに深水川をわたりました
ここから先は、徒歩で行くことになります。
「歩行者と二輪車は通行できます」と書いてあります。
肥薩線の踏切をわたります。
川口第1号踏切といいます。
肥薩線は、人吉方面も八代方面もトンネルです。
深水橋が見えます。
高くて怖いです。
ガードレールか柵がないと、つまずいたら崖に落ちそうです。
二輪車で通行とかムリでしょ。
崖側の柵は、全域これくらいの高さにしておいてほしいです。
深水発電所の屋根が見えてきました。
すぐそこに見えていますが、道はつながっていません。
無理やり崖を降りて、線路を横切れば行けそうです。
しかし、大昔にこんな道もないところに、どうやって発電所を建てたのが不思議です。
溝に通る鉄管が発電所の導水管です。
思っていたより細々としています。
確かに発電所へつながっています。
坂本工場の発電所
深水発電所ができたのは、1921年(大正10年)のことです。
当時の九州製紙坂本工場が、自社専用発電所として建設したものです。
最大出力は880kwですが、年間の平均出力は550kwと、今見ると小スペックです。
しかし、深水発電所は坂本工場が操業を停止する1988年(昭和63年)まで、現役施設として稼働していました。
工場の閉鎖とともにその役目を終えています。
坂本工場では、この深水発電所を含めて、4つの自社発電所があったそうです。
そのうち、2つは構内発電所であり、既に解体されています。
遺構が残るのは、鮎帰発電所と、この深水発電所となっています。
社有発電所の意義
電力の消費量が大きい製紙工場では、現在も自社内に発電所を持っています。
それは、コスト削減だけのためにやっているのではありません。
万一、電力が確保できなければ、工場の生産量はゼロになってしまいます。
生産量がゼロということは、収入もゼロです。
さらに、製品の供給ができないと、競合他社に販売先ごと渡してしまうリスクがあります。
製紙工場にとって、自社発電所を持つのは、生き残りのためなのです。
明治時代から大正時代に、現在のように電力会社から電力の安定供給は、期待できなかったと思います。
発電能力のみならず、送電網や交通インフラももろく、いったん災害がおこれば、停電が何日も続いていたことが想像できます。
まとめ
深水発電所は、坂本工場にとってなくてはならない設備でした。
道もないような断崖絶壁に建てられ、山奥に導水路を引いてあります。
山中には調整池や、管橋などの遺構が残されているそうです。
現在の所有者は、日本製紙となっています。
長い間、製紙工場に貢献してきた発電所です。
末永く遺構として保存されることを祈ります。
場所 熊本県八代市坂本町中谷ろ
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