揖宿(いぶすき)神社は、鹿児島県指宿市にある神社です。
706年創建の、歴史ある古社となります。
島津氏と揖宿神社
指宿は、江戸時代より前には、高温の温泉や噴気口が点在する湿原が広がっていました。
危険な場所とされていましたが、温泉は古くから利用されていました。
第10代薩摩藩主、島津斉興(なりおき)公以降、指宿は薩摩藩主御用達の温泉地でした。
揖宿神社の近くには、「殿さまの湯」とよばれた、温泉がつくられていました。
そのせいか、揖宿神社は、島津氏代々の尊崇があつかったといわれています。
斉興公による社殿改築以降、薩摩藩時代の改修は、すべて藩費で行われていました。
調所笑左衛門が寄進した手水鉢
調所笑左衛門(ずしょしょうざえもん)というのは、江戸時代後期に薩摩藩の家老であった人物です。
今風にいえば、薩摩国の経済官僚です。
当時、膨大な借金を抱え窮地にあった薩摩藩を、明治維新の原動力となる大国に変えた人物です。
驚異的な財政再建は、調所笑左衛門なしには成し遂げらませんでした。
揖宿神社の手水鉢は、調所笑左衛門が寄進したものです。
ご祭神
大日孁貴命(あまてらすおおのかみ)とその御子神をまつります。
主祭神
大日孁貴命(あまてらすおおのかみ)
相殿神
- 天之忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)
- 天之穂日命(あめのほひのみこと)
- 天津日子命(あまつひこねのみこと)
- 活津日子根命(いくつひこねのみこと)
- 熊野久須毘命(くまのくすびのみこと)
- 多紀理毘売命(たぎりびめのみこと)
- 狭依日売命(さよりひめのみこと)
- 多岐津比売命(たぎつひめのみこと)
- 建御名方命(たけみなかたのみこと)
摂社
揖宿神社はかつて、開聞新宮九杜大明神とよばれていました。
九社というのは、主祭神と摂社8柱のご祭神を指しています。
東之宮
彦火火出見命(ひこほほでみのみこと)
二龍宮
和田都美命(わたつみのみこと)
聖宮
塩土翁命(しおつちおじのみこと)
懐殿宮
昭美日月命(あきみかつきのみこと)
西之宮
天命開別命(あめみことひらかすわけのみこと )
姉姫宮
豊玉姫命(とよたまひめのみこと)
天井宮
玉依姫命(たまよりひめのみこと)
荒仁宮
大己貴命(おおなむちのみこと)
オオクス
揖宿神社の境内を、囲むように繁るオオクスの大木は、樹齢1000年とか。
これだけの老木が群生した状態は、県内でも珍しいといわれています。
田の神依代ムクノキ
田の神依代(よりしろ)ムクノキというのは、指宿神社の鳥居の正面にある大木のことです。
慰霊碑や鎮魂碑がある一角に、そびえています。
南九州にみられる「田の神さあ」が、石造となる前に依りついていたムクノキです。
古神道の自然崇拝で、神さまとされたムクノキです。
場所 鹿児島県指宿市東方733
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