長坪保安退避室、通称「長坪シェルター」は、 鹿児島県肝付町にある建物です。

宇宙ロケット打ち上げ時の異常事態に退避する施設として建てられたものです。
USC

内之浦宇宙観測所(以下USC と書きます)の開所は、1962年 (昭和37年)です。

USCの主目的は、宇宙ロケットの発射・追跡・コントロールです。

山地を切り開いて造成した台地に、分散して施設が建てられています。

その建物の用途は一般の建物と違い、求められる機能も全く違います。

そして、 造形的にも一般建築物とは明確に分けることを意識して建てられました。

内之浦宇宙観測所は、鹿児島県肝属郡肝付町にあるJAXA の宇宙観測施設、ロケット打ち上げ施設です。 1963年(昭和38年)の開所以来、約400機のロケットを打ち上げています。 ロケット発射場 […]
シェルター

ロケットの重量の大部分は燃料が占めます。

特に打ち上げの際には、 万一の事態を想定した対策が講じられます。

当初、長坪地区にはロケット打ち上げ時にも、住民がとどまることを想定していました。

1967年 (昭和42年)に、住民用のシェルターとして建てられたのが、長坪保安退避室です。

対爆性は当然として、造形的にも一般建造物とは全く違うデザインとなっています。

また、当時の先駆的技術の実験という意味合いも含んでいたといわれています。

現在の退避基準

現在は、安全基準が厳しくなり、ロケット打ち上げ時には半径2.1km以内は立入禁止となっています。

住民もそうですが、遠隔操作が可能となった USC の職員も同様に遠距離退避しています。

そのため、長坪保安退避室は使命を終え、建築後半世紀を経て解体されるはずでした。

ところが、地元役場がその資産的価値を認め譲り受けたため、現在も保存されています。

しかし USC 施設内にある開設当時の施設は、解体が進んでいます。

池邊陽 (いけべきよし)

USC 開所時の建物の多くを設計したのは、 東京大学生産技術研究所の池邊陽 (1920-1979) 教授です。

池邉教授は、地域住民のことを非常に大切に考えていました。

長坪保安退避室は、以下のことを目指していたといいます。
遊具として子供に親しまれること
シェルターの重苦しいイメージを払拭すること
内之浦の住民に受け入れられる施設であること

池邊教授の住民への思いが詰まっています。

場所 鹿児島県肝属郡肝付町南方

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