堀川運河は、宮崎県日南市にある、全長 984mの運河です。
江戸時代からの海運ルートは、現在も観光資源として、油津 (あぶらつ) の歴史を刻んでいます。
飫肥杉の運搬
飫肥(おび)藩は、銘木・飫肥杉の産地で知られます。
江戸時代になる前には、その名は全国に知られ、各地へ送られていました。
領内で伐採された飫肥杉は、広渡(ひろと)川で河口まで運ばれます。
河口から油津港までは海上輸送していたのですが、 大節鼻を大きくう回するため5kmほどありました。
台風の度、船が壊れるので船の数は限られ、天候により強風や潮流で木材が流失します。
そのため、この海上輸送部分が木材運搬のボトルネックとなっていました。
伊藤祐実
江戸時代になると、世の中が安定し木材需要が高まります。
当時の飫肥藩主・伊藤祐実(いとうすけざね) は、木材輸送のボトルネックを解消するため、運河の開削を行います。
広渡川河口から油津港まで、油津の町中を横切る大工事でした。
しかも、硬い岩盤に当たり予想以上の難工事で、断念案も噴出するほどでした。
しかし、藩主の意志は固く、1986年に堀川運河は竣工しています。
隆盛と衰退
堀川運河の開通は、木材運送が飛躍的に改善されただけではありません。
台風接近時の船舶の避難場所となり、船の損害が抑えられています。
1913年(大正2年) 鉄道が開通したことで、次第に堀川運河は使われなくなりました。
役目を終えた堀川運河は、長い間に荒れてしまうことになります。
観光資源
1985年 (昭和60年)ごろから、堀川運河が観光資源として注目を集めるようになります。
1903年(明治36年)に、堀川運河に架けられた石造アーチ橋・堀川橋を中心として、環境整備が進められました。
1992年 (平成4年)には、映画 「男はつらいよ 寅次郎の青春」のロケ地となります。
現在では、歴史的景観を残す町並みが、日南市を代表する観光名所となっています。
油津港
油津港は、旧来より漁港としてだけではなく貿易港として発展してきました。
明治時代には大阪航路が開設され、油津の街は大きく発展しています。
現在も、重要港湾としての位置づけは変わりません。
堀川運河の脇には、人柱碑が立っています。
堀川運河が難工事の末、竣工したことがうかがえます。
堀川橋
堀川橋は吾平津神社の正面に架ります。
地元の方は、吾平津神社を「乙姫さん」。堀川橋を「乙姫橋」とよびます。
堀川資料館は、堀川橋の近くにある観光施設です。
映画 「男はつらいよ 寅次郎の青春」ロケ時の資料などが置いてあるため、見たかったのですが、工事中でカギがかかっていました。
飫肥杉を使った木造建築で、油津の街並みに溶け込んだ外観です。
チョロ船
チョロ船というのは、昭和時代中盤まで使われていた、木造帆船です。
木材運搬で使われていた船ではなく、沿海漁業で使われていました。
主にシビ・マビキ・カジキマグロを揚げています。
昭和時代のはじめには、50隻ほどのチョロ船が漁に出ていたといいます。
堀川運河に停泊しているチョロ船は、平成時代に復元されたものです。
夢見橋
夢見橋は、飫肥杉と飫肥石を使い、伝統工法で造った橋です。
周辺も観光地として、きれいに整備されています。
堀川運河沿いは景観が美しく、ウッドデッキのせいか、歩いてみて回っても疲れません。
天井のアーチ部分から、飫肥杉の弾力性がわかります。
場所
油津港 | 宮崎県日南市油津2丁目11-10 |
堀川橋 | 宮崎県日南市油津1丁目1-5 |
堀川資料館 | 宮崎県日南市油津1丁目1 |
チョロ船 | 宮崎県日南市材木町5-5 |
夢見橋 | 宮崎県日南市園田3丁目3-31 |
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