大蘇(おおそ)ダムは熊本県産山村にある、かんがい専用ダムです。
その特徴は、ダム湖一面に広がるコンクリート壁です。
ダムの目的
大蘇ダムは農林水産省九州農政局直轄のかんがい用ダムです。
水不足に悩む大分・熊本両県の農地に、農業用水を供給するため計画されています。
受益農地は大分県竹田市が6割、熊本県阿蘇市と産山村が4割です。
スケジュールの遅れ
大蘇ダムは1979年(昭和 54年)に着手したダムです。
当初は、1987年(昭和62年)には完成する計画でした。
もともと、阿蘇カルデラ北外輪山の火山噴出物でできている地盤に計画されています。
着工前に基礎地盤に亀裂がみつかり、2度に及ぶ計画変更を余儀なくされています。
そのため、2005年(平成17年)竣工と大幅にスケジュールが遅れました。
漏水問題
大蘇ダムは2006年(平成18年)にも給水を開始する予定でした。
ところが、試験湛水してみてわかったのは予想外の漏水です。
供給能力は当初の半分程度になりましたが、一部で給水をはじめました。
本来の能力を発揮するため、2010年(平成22年)からは、斜面の漏水対策工事を余儀なくされます。
2020年(令和2年)本格的に供用を開始しています。
なおも止まらぬ漏水
漏水対策を終えた大蘇ダムですが、依然目安の10倍の漏水が続いているといいます。
もちろん、湖底やのり面のチェックをしていますが、異常はなく原因は不明です。
根本的な原因がわからないと、これ以上の対策工事もできません。
ただし、現状で10年に1度の渇水でも農業用水はまかなえるとされています。
まとめ
多くのダムが造られてきた現在でも、計画時点では想定できない問題があるようです。
大蘇ダムでは、計画当初より供用まで40年もの期間がかかったほか、事業費も膨らんでいます。
自然を相手にするのは一筋縄ではいかないということを再認識させられます。
諸元
名称 | 大蘇(おおそ)ダム |
場所 | 熊本県阿蘇郡産山村山鹿 |
水系 | 大野川 |
河川 | 大蘇川 |
型式 | ロックフィル |
事業者 | 九州農政局 |
施行者 | 大成建設・鹿島建設・梅林建設 |
ダム湖 | ー |
目的 | かんがい用水 |
最高出力 (発電) | ー |
堤高 | 69.9m |
堤頂長 | 262.1m |
堤体積 | 1,397千㎥ |
流域面積 | 26㎢ |
湛水面積 | 28ha |
総貯水容量 | 4,300千㎥ |
有効貯水容量 | 3,890千㎥ |
着手/竣工 | 1975/2019 |
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