高千穂線というのは、かつて宮崎県延岡市と高千穂町を結んでいた鉄道路線です。
2005年(平成17年)9月、台風14号により被災し、2008年(平成20年)に全線が廃止されました。
廃線後の駅跡
高千穂線は、国鉄高千穂線からJR九州を経て、高千穂鉄道という3セク鉄道が運営していました。
高千穂線は、早くに廃止された路線に比べて、遺構も残っていますし駅跡もたどりやすいです。
しかし、廃線から10年以上たち、少しずつその姿を変えつつあります。
営業キロはちょうど50㎞・全19駅の、2021年(平成3年)現在の経過を残しておきます。
延岡駅
JR九州日豊本線延岡駅(のべおかえき)は、2017年(平成29年)に新駅舎に生まれ変わっています。
生まれ変わった延岡駅の愛称は、エンクロス(encross)です。
高千穂鉄道延岡駅は、JR 延岡駅北側の1面1線のホームを利用していました。
高千穂鉄道用の駅舎もあったのですが、現在は駐車場に転用されています。
西延岡駅
西延岡駅(にしのべおかえき)あたりは、現在も変わらず線路が残してあります。
ホーム、駅名標、築堤なども残されていて、現役時に近い姿を見ることができます。
晩年は、ホーム上にコンクリートブロック製の待合所があったのですが、撤去されています。
駅前の石倉は健在です。
行縢駅
行縢駅(むかばきえき)は、晩年こそ1面1線のホームでしたが、ホーム跡が2面残っています。
木が成長して入れませんが、確かにホーム跡です。
行縢駅の入口です。
駅裏の石倉が、貨物の取扱を裏付けます。
石倉の近くには、踏切跡が残っています。
細見駅
細見駅(ほそみえき)の周辺は、道路が改良されています。
高千穂線の築堤を崩してあるので、当時の姿は残っていません。
この築堤の延長線上の、周囲よりかなり高い位置に細見駅がありました。
裏側に道路ができ、築堤も低くなったため駅は撤去されています。
日向岡元駅
日向岡元駅(ひゅうがおかもとえき)のあたりも、高千穂線跡が一部道になっています。
駅の駐車場は、そのままです。
日向岡元駅跡をななめに横断する形で、道路がつくられています。
駅の駐車場と線路跡っぽい地形が、日向岡元駅の名残りです。
吐合駅
日向岡元駅から吐合駅(はきあいえき)の間は、五ヶ瀬川に国道218号線と高千穂線が並行して走っていました。
五ヶ瀬川沿いが、国道218号線です。
線路は国道より一段高い、斜面沿いを走っていました。
吐合駅跡へ行くために、路地の坂道を通らせてもらいます。
私有地みたいになっていて、入りづらいです。
ホーム跡?らしきものがありますが、フェンスがあり入ることはできません。
吐合駅跡との確信はもてませんでしたが、高千穂線跡であることは間違いありません。
曽木駅
曽木駅(そきえき)には、木造駅舎が残っています。
国鉄時代からの駅舎で、現在は公民館になっています。
建物内に駅らしさは残っていませんが、外観は昭和時代の駅らしさがあります。
駅の裏側が高千穂線跡になりますが、ホームは撤去されています。
線路跡は、一面芝生です。
下の農道に降りてみると、築堤上に線路があったことがわかります。
川水流駅
川水流駅(かわずるえき)には、広い鉄道用地が残っています。
保線区があったためです。
2005年(平成17年)に、保線車両が浸水したのも、高千穂線復旧断念の一因でした。
残念ながら、建物やホームは何も残っていません。
枕木が小川の橋につかわれていたり、境界の目印に置かれていたりします。
ちなみに2005年(平成17年)に流失した、第1五ヶ瀬川橋梁は、川水流駅のすぐ上流です。
台風直後の航空写真で、橋が流失した様子をみることができます。
上崎駅
上崎駅(かみざきえき)には、ホームと待合所が残されています。
コンクリート製の待合所なので、当面は撤去されずにすみそうです。
待合所の中には、廃線当時の時刻表がそのまま掲示してありました。
駅名標もあります。
早日渡駅
早日渡駅(はやひとえき)には、ホームの一部が残されていました。
ずいぶん短くなっていますが、間違いなくホーム跡です。
ホーム上に生えた木が大きく育っています。
ホームの横には、「駅前健康館」と書かれた建物が建てられています。
この建物の中に、駅名標と運賃表が外から見えるように掲示してあります。
建物内にあるので、きれいで長持ちしそうです。
亀ヶ崎駅
亀ヶ崎駅(かめがさきえき)は、五ヶ瀬川沿いに造られた渓谷の底の駅です。
入り口がよくわかりませんでしたが、駅はこの斜面の下にあるはずです。
斜面の上から近づくのはムリということはよーくわかりました。
次の機会には、駅まで到達したい難所です。
2005年(平成17年)の大水害で流失した第2五ヶ瀬川橋梁は、亀ヶ崎駅~槇峰駅の間です。
水害直後の写真では、上部工が流され横たわっているのがわかります。
綱ノ瀬橋梁
綱ノ瀬橋梁(つなのせきょうりょう)は、槇峰駅のすぐ延岡川にある鉄道橋です。
綱ノ瀬川と五ヶ瀬川の合流点にあり、コンクリートでできています。
橋の上には線路が残してありました。
槇峰駅
槇峰駅(まきみねえき)は、駅舎やホームがしっかりした姿で残っています。
線路がない以外は、まるで現役の駅です。
以前、槇峰鉱山から産出される銅を積み込んでいました。
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日向八戸駅
日向八戸駅(ひゅうがやとえき)には、八戸黎明館が建っています。
八戸黎明館というのは、鉄道時代からある駅舎と公民館を兼ねた建物です。
確かにホームに沿っていて、駅の役割を果たしています。
時刻表も駅舎の壁に掛けられていました。
第3五ヶ瀬川橋梁
第3五ヶ瀬川橋梁(だいさんごかせがわきょうりょう)は、吾味駅のすぐ下流にある鉄道橋です。
五ヶ瀬川を斜めに横切る、高千穂線を象徴する風景をつくっています。
吾味駅
吾味駅(ごみえき)は、三角屋根の駅舎が特徴です。
ホームも残っていて、線路跡は全長4㎞の遊歩道として整備されています。
TR鉄道跡地散策コースといって、吾味駅が起点です。
延岡方向へ進み、日向八戸駅を経て槇峰駅まで続いています。
第3五ヶ瀬川橋梁を歩いて渡ることができます。
日之影温泉駅
日之影温泉駅(ひのかげおんせんえき)は、日之影線時代の終着駅です。
現在も大きな駅舎がそのまま商業・観光施設として残ります。
注目はTR列車の宿、高千穂線を走っていた車両を改造した宿泊施設です。
日之影温泉駅に入線してきそうな感じで、列車が配置されています。
日之影温泉駅は、宮崎県日之影町にある高千穂鉄道高千穂線の駅でした。 高千穂線廃線後も、温泉施設として営業を続けています。 温泉がある鉄道駅 日之影温泉駅は駅名の通り、温泉施[…]
影待駅
影待駅(かげまちえき)は、これまた五ヶ瀬川沿いの渓谷の斜面にあった駅です。
駅へ続く道らしきものが見えるので、登ってみようと思います。
入り口の段階で、完全にヤブです。
いゃ~、これはムリでしょう。
影待駅跡へ行くなら、季節は冬にすべきことがわかりました。
深角駅
深角駅(ふかすみえき)は、高千穂線の中でも最も利用者の少なかった駅です。
この駅も難所なのかと思いきや、車で行くことができました。
周辺も整備されていて、秘境感はあまりありません。
待合所も満身創痍ではありますが、残っています。
何より線路があるので、列車がきそうな錯覚に陥ります。
高千穂橋梁
高千穂橋梁(たかちほきょうりょう)は、かの有名な日本一高い鉄道橋でした。
岩戸川の水面からの高さは105mです。
深い渓谷は、本当に神さまが降りてきそうな地形です。
天岩戸駅
天岩戸駅(あまのいわとえき)は、天岩戸神社の最寄り駅です。
駅名も天岩戸神社が由来になっています。
しかし、天岩戸神社までは5km離れていて、歩くと1時間かかります。
ホームも待合所もありますが、立入禁止になっています。
高千穂駅
高千穂駅(たかちほえき)は、現役時の姿がそのまま残ります。
というのも、高千穂あまてらす鉄道が観光施設として営業しているためです。
小型気動車を使って、高千穂橋梁までを往復しています。
将来は日之影温泉駅までの運行も計画されていて、楽しみな存在です。
車庫には、なんと高千穂鉄道の車両が動態保存されています。
駅構内に限りますが、一般の方が鉄道車両の運転体験をできるアトラクションです。
トンネルの駅
トンネルの駅というのは、高千穂線の先の未成区間にある観光スポットです。
高千穂駅と高森線高森駅を結ぶ計画は決まっていて、すでに工事も着工していました。
ところが、高森トンネルの出水や、国鉄の財政難により結局開通していません。
トンネルの駅は、すでに出来上がっていた未開通区間のトンネルや橋を、神楽酒造が観光施設化したものです。
神楽酒造といえば「ひむかのくろうま」で有名な、焼酎メーカーです。
保存されているのは、高千穂線を走っていたTR-300形車両です。
未成線の橋脚の上には、8620形蒸気機関車 「48647」が保存されています。
「まいてつ」の主役「ハチロク」のモデルで、「SL人吉」と同型車両です。
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