高千穂鉄道

高千穂鉄道 被災後の復旧を断念した3セク鉄道

高千穂鉄道というのは、かつて高千穂線を運営していた鉄道会社です。

高千穂鉄道 線路跡

高千穂線は、パワースポット高千穂へ向かう渓谷を走る、全国でも人気の高い路線でした。

国鉄高千穂線を継承

高千穂鉄道 高千穂駅
高千穂駅

高千穂鉄道高千穂線の前身は、国鉄高千穂線です。

宮崎交通 高千穂駅バス停
宮崎交通 高千穂駅バス停

1987年(昭和62年)には、JR九州高千穂線となります。

高千穂鉄道 天岩戸~高千穂区間
天岩戸~高千穂区間

1989年(平成元年)に、JR九州から高千穂線を引き継いだのが、第3セクターの高千穂鉄道でした。

高千穂鉄道 天岩戸~高千穂区間
天岩戸~高千穂区間

高千穂線は、工業都市延岡から、深い渓谷を縫うように走り、神々の里高千穂へ至る路線です。

高千穂鉄道 天岩戸~高千穂区間
天岩戸~高千穂区間

まさに神々が舞い降りそうな、神秘的な景観が楽しめました。

高千穂鉄道 深角~天岩戸区間
深角~天岩戸区間

自然災害により廃線

高千穂鉄道 日之影温泉~影待区間
日之影温泉~影待区間

高千穂線は、渓谷を走る路線であるため、ひとたび災害が起こると大きな被害を受けます。

高千穂鉄道日之影温泉駅と五ヶ瀬川
日之影温泉駅と五ヶ瀬川

2005年(平成17年)9月、台風 14号による五ヶ瀬川流域の大出水に見舞われます。

高千穂鉄道川水流駅跡
川水流駅跡

五ヶ瀬川にかかる 2 つの鉄橋が流されたほか、保線区のあった川水流駅が浸水するなど大きな損害を受けました。

苔アート 日之影のトトロ
苔アート 日之影のトトロ

観光地でもあり復旧されるものと思っていました。

流失した第1五ヶ瀬川橋梁
流失した第1五ヶ瀬川橋梁

しかし、復旧額は膨大で費用の公費負担はかないませんでした。

流失した第2五ヶ瀬川橋梁
流失した第2五ヶ瀬川橋梁

復旧を断念した高千穂線は、2008年(平成20年)に全線が廃止されています。

流失を免れた第3五ヶ瀬川橋梁
流失を免れた第3五ヶ瀬川橋梁

高千穂鉄道は高千穂線の廃線後解散し、清算も完了しています。

高千穂あまてらす鉄道

高千穂線廃線後は、民営で復活の動きがありました。

高千穂あまてらす鉄道

しかし、過疎地での旅客鉄道運営は、公的支援がないとものすごくハードルが高くなります。

現実路線として、観光向け保存鉄道として営業をはじめたのが、高千穂あまてらす鉄道です。

高千穂あまてらす鉄道 公式SNS

現在は、小型気動車で高千穂駅から高千穂橋梁の間を往復運転しています。

高千穂橋梁

高千穂あまてらす鉄道のおかげで、日本一高い鉄道橋・高千穂橋梁からの景色が、今も楽しめます。

そして、高千穂鉄道で使われていた車両を譲り受け整備しています。

高千穂駅では、本物の鉄道車両の運転体験ができます。

TR

高千穂鉄道株式会社 社名標

TR というのは、高千穂鉄道の略称です。

TR 鉄道跡地散策コース 起点

Takachiho Railway の頭文字をとったものです。

TR列車の宿
  • 「TR 列車の宿」
  • 「TR 鉄道跡地散策コース」

など、TRという呼称は、現在も当地では根強く浸透しています。

TR列車の宿

TR列車の宿

日之影温泉駅では、高千穂線を走っていたTR-100形車両を改造し、宿泊施設として営業しています。

日之影温泉駅 TR列車の宿

温泉地でもあるし、鉄道マニアが沿線で宿泊するならここ一択でしょう。

TR列車の宿

場所 宮崎県西臼杵郡日之影町大字七折 3235-5

【公式】列車の宿/日之影温泉駅

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日之影温泉駅

使用車両

国鉄時代の晩年には、キハ20形気動車で編成されていました。

窓の上に固定窓、いわゆるバス窓のキハ20形は、昭和30年代から活躍する長寿車両でした。

JR九州になってからも、九州色に塗装されたキハ20で編成されていました。

TR100形気動車

高千穂鉄道となり、車両は一新されます。

高地千穂鉄道の車両たち

1989年(平成元年)の営業開始から、2007年(平成19年)の廃線まで、11両の車両が高千穂線を走りました。

TR-100形

TR-100は、高千穂鉄道へと転換する際、一般用車両として導入された車両です。

TR-100形

廃線まで運用されていました。

TR-101

TR-101 は、現在も高千穂駅の車庫で整備保存されていて、運転体験ができます。

愛称は「しろやま」です。

TR-102

TR-102は、延岡駅に保存されていましたが、2008年(平成20年)に解体されています。

愛称は「わかあゆ」でした。

TR-103

TR-103 は、高千穂駅に保存されていましたが、2008年(平成20年)に解体されています。

愛称は「ひえい」でした。

TR-104

TR104は、日之影温泉駅で、TR列車の宿として再活躍しています。

TR-104

愛称は「せいうん」です。

TR-105

TR-105はTR-104と同様、日之影温泉駅でTR列車の宿として余生を過ごしています。

TR-105

愛称は「かりぼし」です。

TR-200形

TR-200 は、3セク転換時に導入された観光用車両で、TR-100 と車体や走行装置はほぼ同じです。

TR-100との違いは、セミクロスシートの有無です。

全席ボックスシートの TR-200 は、観光用車両として2両が導入されています。

廃線まで高千穂線を走っていました。

TR-201

TR-201 は、阿佐海岸鉄道に譲渡され、ASA301 型車両として活躍しています。

愛称は「かぐら」でした。

TR-202

TR-202 は、現在も高千穂駅の車庫に動態保存され、高千穂あまてらす鉄道が運用しています。

愛称は「うんかい」です。

TR-300形

TR-300は、1991年(平成3年)に2両を導入しています。

TR-300形

本格的観光用車両でしたが、TR-400形の導入により2003年(平成15年)に運用を外れました。

TR-301

TR-301は、高千穂線の未成区間にあるトンネルの駅で保存されています。

TR-301

観光施設として余生を過ごしています。

TR-302

TR-302はTR-301とともに、トンネルの駅で観光施設と施設として保存されています。

TR-302

TR-301、TR-302ともに、座席指定列車「たかちほ号」として運行していました。

TR-400形

TR-400形気動車は、2003年(平成15年)に、高千穂鉄道が2両を導入した観光用車両です。

2005年(平成17年)の休線まで、たった2年間しか運用されませんでした。

TR-401

TR-401の愛称は、「天鈿女(あまのうずめ)」です。

TR-401

高千穂鉄道TR-400形気動車 Wikipedia

高千穂線廃止後、JR九州へ譲渡され、キハ125-401「海幸」に改造されています。

キハ125-401

海幸山幸 (列車) Wikipedia

現在、同じ宮崎県の日南線などへ活躍の場を移しています。

TR-402

TR-402の愛称は、「手力男(たぢからお)」でした。

TR-402

高千穂鉄道TR-400形気動車 Wikipedia

TR-401とともにJR九州へ譲渡され、キハ125-402「山幸」に改造されています。

キハ125-402

海幸山幸 (列車) Wikipedia

沿革

1935年(昭和10年)延岡~日向岡元間が日之影線として営業開始
1936年(昭和11年)日向岡元~川水流間を延伸
1937年(昭和12年)川水流~槇峰間を延伸
1939年(昭和14年)槇峰跡~日之影間を延伸
1972年(昭和47年)日之影~高千穂間を延伸し高千穂線へ改称
1980年(昭和55年)延伸工事中であった高千穂~高森間の工事凍結
1984年(昭和59年)第2次特定地方交通線として廃止承認
1987年(昭和62年)JR九州が事業継承
1988年(昭和63年)3セク鉄道への転換決定
1989年(平成元年)高千穂鉄道へ転換
2005年(平成17年)台風14号による水害で被災し、全線で運行休止
同年内に復旧断念と廃止の方針が決定
2007年(平成19年)延岡~槇峰間を廃止
2008年(平成20年)槇峰~高千穂間を廃止

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