知覧武家屋敷庭園は、鹿児島県南九州市知覧町にある武家屋敷群です。
外城(とじょう)制を敷いた薩摩藩には、郷ごとにミニ城下町が形成されています。
なかでも知覧郷の武家屋敷は、当時の姿を色濃く残し、南薩の一大観光地となっています。
外城制
徳川幕府は武家諸法度で、一国一城と定めています。
全国の諸藩は外城を廃止し、武士を城下町に集めて住ませるようになります。
しかし、薩摩藩では、城を廃止するかわりに地頭仮屋を置いています。
そして、外城のあった麓集落に、そのまま武士を住まわせ続けます。
これが、のちに郷とよばれるようになります。
幕府はこの外城制に疑問を持ちましたが、薩摩藩は「武士人口が多いので分散居住している」と答えています。
実際、全国では士族の割合が6%であったのに対し、薩摩藩では 26%に上っていました。
また、農民統治と一揆対策のためとしていました。
実は島津氏の地域の支配拠点として、また中央政権や他藩との対決に備える軍事拠点として機能していました。
武家屋敷通り
知覧町では古くから、官民一体で武家屋敷の保全に力を注いできました。
武家屋敷通りには民家もあるのですが、景観を損なわないように配慮されています。
1981年(昭和56年)には、国の重要伝統的建造物群保存地区の選定を受けています。
通りが一直線でないのは、敵が侵入したときに通りを見渡せないようにするためです。
屋敷の門から中を見ると、石垣が積んであります。
矢などの攻撃を防ぎ、敵が一気に中に進入できないようにするためだそうです。
入園について
休園日 | 年中無休 |
開園時間 | 午前9時~午後5時まで |
入園料 | 大人 530円 小人320円 |
チケット 売り場 | 東側:森重堅庭園 西側:武家屋敷通り入口の入園料取扱所 |
入園料は庭園の維持管理に使われます。
各庭園へは、入園料を払うともらえる、パンフレットを手にもって入るようになっています。
駐車場
普通車 | 1時間200円 以降1時間50円 |
二輪車 | 1時間50円 |
武家屋敷通りの西端にある、城山橋から入るとある、森庭園売店駐車場は無料になっています。
東端となる永久橋を渡った市役所交差点近くに、武家屋敷駐車場があります。
武家屋敷通りの中間点となる、県道 23 号線沿いにも駐車場がいくつかあります。
庭園
どの庭園も手入れが行き届いていて、美しい姿を残しています。
御仮屋跡
御仮屋は郷の中心で、城みたいなものです。
藤棚のある公園から裁判所一帯に、御仮屋が置かれていました。
西郷忠一郎庭園
平山克己庭園
平山亮一庭園
石敢当
石敢当(せっかんとう)というのは、屋敷の中に魔物が入るの防ぐものです。
三叉路の突き当りに建てられます。
西郷どんロケ地
知覧武家屋敷庭園は、NHK大河ドラマ「西郷どん」のロケ地です。
放映されたシーンが撮影されたのは、まさにこの場所です。
知覧型二ツ家
知覧型二ツ家というのは、本来は別棟であった2つの家をつなげて作る建築工法です。
知覧の大工が創作した、知覧独特の工法です。
佐多美丹庭園
佐多民子庭園
佐多直忠庭園
旧高城家住宅
知覧式二ツ家で、お屋敷の中を見ることができます。
ただし、高城庵さんがお食事を提供される場所として使われています。
勝手にあがってはいけません。
森重堅庭園
矢櫃(やびつ)橋
矢櫃橋は武家屋敷通りの東端、麓川にかかる石橋です。
亀甲城へ渡るための、重要な橋でした。
江戸時代には、鹿児島城下との往来のため多くの人が渡っていました。
一帯は亀甲城公園として整備されています。
亀甲城というのは、中世の知覧城の出城です。
鹿児島方面からの敵の侵入に備える前衛的なお城でした。
矢櫃橋の語源は、「矢を引く」が語源とされています。
有事にはこの橋を渡る敵に対し、矢を引いていたのかもしれません。
富屋食堂
時代は違いますが、特攻隊員の母といわれた鳥濱トメさんのお店です。
帝国陸軍の指定食堂で、出撃前の特攻隊員たちが訪れていた食堂です。
トメさんは献身的に特攻隊員たちを支えていました。
戦後は遺族たちのために、富屋旅館となっています。
トメさんの死後、「ホタル館富屋食堂」として、復元し現存しています。
麓公園
麓公園は、富谷食堂と武家屋敷入口の間にある公園です。
麓川のかかる、木橋を渡って入ります。
公園だけでなく、飲食店が並んでいます。
まとめ
武家屋敷は各地に残っていますが、知覧は特に保存に力を入れていて、すばらしく美しい景観が見られます。
観光的にも、知名度の高い武家屋敷群となっています。
場所 鹿児島県南九州市知覧町麓
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