水俣駅の山野線跡

山野線 伊佐の鉱山地帯を結んだ鉄道路線

山野線は、かつて熊本県水俣市から、鹿児島県栗野町までを結んでいた、JR 九州の鉄道路線です。

山野線 薩摩布家駅から西山野駅間の隧道跡

1937年(昭和 12年)に全通、1988年(昭和63年)に全線が廃止されています。

廃線経緯

山野線は全55.7 km、全16駅のローカル線でした。

山野線 水俣駅の山野線跡

沿線には、菱刈や牛尾、大口、布計などの鉱山がありました。

深川駅の山野線跡

当初は、この鉱山開発のために敷設された路線です。

西山野駅の山野線跡

鉱山やチッソの水俣工場が全盛のころは、活況を呈しました。

稲葉崎駅から栗野駅の間の山野線跡

しかし、モータリゼーションの進行で利用客が減少します。

稲葉崎駅から栗野駅の間の山野線跡

1984年(昭和 54年)には、第2次特定交通線として廃止が承認されます。

山野線 稲葉崎駅から栗野駅の間の橋梁

廃線直前には名残を惜しんで、多くの乗客が利用しますが、1988年(昭和63年)に廃線の日を迎えました。

山野線路線図

現在の状況

山野線 薩摩大口駅の駅標

廃線後30年を超えた現在の状況です。

日本一長い運動場

山野線跡 日本一長~い運動場 水俣駅の起点

熊本県側の山野線跡は、早々に線路が撤去されています。

山野線跡 日本一長~い運動場

水俣駅から久木野駅まで、全長 14 kmの「日本一長い運動場」として整備されました。

山野線跡の橋梁を利用した、日本一長~い運動場

山野線の鉄橋などもそのまま利用されています。

水俣駅(みなまたえき)

山野線の起点駅です。

山野線は3番ホームから発着していました。

東水俣駅(ひがしみなまたえき)

山野線 東水俣駅

建物がありますが、廃線後に建てられたものです。

山野線 東水俣駅

現役時は、ホームとホーム上の待合所だけの駅でした。

山野線 東水俣駅

深川駅(ふかがわえき)

山野線 深川駅

バス路線転換後のバス停として整備されています。

山野線 深川駅

ホームの遺構は、貨物線のものです。

山野線 深川駅 貨物線ホームの遺構

深渡瀬駅(ふかわたせえき)

山野線 深渡瀬駅

遺構らしき遺構は残っていません。

山野線 深渡瀬駅 ホーム跡

遺構はホーム跡のみです。

山野線 深渡瀬駅近くの商店

駅周辺のお店も閉まってしまいました。

山野線 深渡瀬駅前のJA

久木野駅(くぎのえき)

急行「からくに」の停車駅でした。

現在も駅らしい風景が残っています。

大川ループ線

山野線には、県境を越える峠に小さなループ線がありました。

現在もループ線の築堤が残っています。

薩摩布計駅(さつまふけえき)

布計で県境を越えるのは、開駅当時は金山と大きな集落があったからです。
駅の遺構が保存されています。

西山野駅(にしやまのえき)

山野線 西山野駅

もともと駅舎はなく、ホーム上の待合所があるだけの駅でした。

山野線 西山野駅 ホーム

ホームが現存します。

山野線 西山野駅 ホーム

山野駅(やまのえき)

山野線 山野駅跡

路線名となった駅です。

山野線 山野駅跡の記念碑

駅の記念碑と駅名標が残ります。

山野駅鉄道記念館

「山野駅鉄道記念館」というのがとても気になります。

山野線 山野駅跡

しかし、山野駅跡にあることを記念した公民館という意味らしいです。

山野線 山野駅近くの橋梁

鉄道遺構が展示されているわではありません。

山野線 山野駅跡

郡山八幡駅(こりやまはちまんえき)

山野線 郡山八幡駅

道路になってしまいました。

山野線 郡山八幡駅

駅の面影は一切残っていません。

山野線 郡山八幡駅

薩摩大口駅(さつまおおくちえき)

宮之城線との乗換駅でした。

多くの支線を持っていた駅です。

西菱刈駅(にしひしかりえき)

山野線 西菱刈駅

「下手地区語らいの場」は、当時の駐輪場?

山野線 西菱刈駅

それ以外駅らしいものは見つけられませんでした。

山野線 西菱刈駅

菱刈駅(ひしかりえき)

山野線 菱刈駅跡の碑

近くによらないと、石碑の文字は読めませんが・・・

山野線 菱刈駅跡の碑

大きな記念碑があります。

山野線 菱刈駅跡の碑

駅跡はAコープ菱刈店になっています。

山野線 菱刈駅

駅の雰囲気は残りますが、駅の遺構は少なくなっています。

山野線 菱刈駅

前目駅(まえめえき)

山野線 前目駅

現在の景色から、この場所が駅だったとはわかりません。

山野線 前目駅

湯之尾駅(ゆのおえき)

山野線 湯之尾駅

駅舎こそありませんが、駅の姿をとどめたまま公園になっています。

山野線 湯之尾駅 線路と車掌車

線路と車掌車がわかりやすい遺構です。

山野線 湯之尾駅 ホーム

ホーム跡と線路跡です。

山野線 湯之尾駅
湯之尾駅前バス停

南国交通のバス停は今でも「湯之尾駅前」です。

山野線 湯之尾駅 金鉱石

ちなみに菱刈鉱山は、日本唯一の現役金鉱山です。

山野線 湯之尾駅 金鉱石の説明板

稲葉崎駅(いなばざきえき)

山野線 稲葉崎駅

おそらく歩道が山野線跡です。

山野線 稲葉崎駅

ここらへんが、稲葉崎駅のはずですが・・・

山野線 稲葉崎駅

駅らしいものは発見できませんでした。

山野線 稲葉崎駅前の郵便局とラーメン店

駅前の郵便局とラーメン屋さんです。

栗野駅(くりのえき)

山野線の終点駅です。

閉鎖されている駅舎側の1番ホームが山野線用のホームでした。

まとめ

廃線から時間が経過するほど、鉄道遺構は少なくなっていきます。

山野線 深川駅

山野線については、まだ鉄道の痕跡が残っていて、当時を偲ぶことができます。

山野線 深渡瀬駅

「黒猫の駅長さん」という、山野線をモデルにしたマンガがあります。

山野線 薩摩布家駅

作中の路線名は「野山線」です。

久木野駅と薩摩布家駅の間の西大川駅という、実在しない架空の駅が舞台となっています。

沿革

山野線 山野駅駅標
1921年(大正10年)栗野~山野間を山野軽便線として開業
1922年(大正11年)山野線へ改称
1934年(昭和9年)水俣~久木野間を山野西線として開業
栗野~山野間を山野東線へ改称
1935年(昭和10年)山野~薩摩布計間を延伸開業
1937年(昭和12年)久木野~薩摩布計間を延伸開業
山野西線と山野東線が全通したため、山野線へ改称
1984年(昭和59年)第二次特定地方交通線として廃止承認
1986年(昭和61年)全線で貨物営業廃止
1987年(昭和62年)JR九州が継承
1988年(昭和63年)全線廃止

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